◇四月、新しいスタートに乾杯!
花開く四月。この季節には、やっぱり桜が似合います。
全国的に、今年の桜はやや早めの様子ですが、そんな暖かさのなか、今年の春は赤ワインで乾杯といきましょう。 |
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◇白ワインとは何が違う?
白ワインは一般的には白ブドウから造られます。
果皮や種、果梗(実がついている軸の部分)を取り除いてからブドウをつぶして、その果汁を発酵させます。
果皮を漬け込まなければ、色素が出ない無色の果汁となるので、黒ブドウからでも造ることができます。
果汁の糖分が残っている段階で発酵を止めれば、甘口タイプのワインができますから、そのコントロールしだいで、甘口から辛口までさまざまな味わいがあります。
味覚の要素としては、糖分による甘み、アルコール分から感じる甘み、そして酸味が主体です。 |
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一方、赤ワインは黒ブドウから造られます。
発酵させる時に、果皮や種(造り手によっては果梗も)と果汁を一緒に漬け込むので、果皮にある色素と渋みのモトとなるタンニンという成分が抽出されます。
果汁に含まれる糖分は発酵してアルコールに変わるため、糖分が残ってる段階でわざわざ発酵を止めない限り、辛口タイプとなります。
辛口といってもピリピリと辛いわけではありませんね。
ドライということであり、甘くないといった方がわかりやすいかもしれません。
もちろん、アルコール分に由来する甘みを感じるワインもありますが、味覚の要素としては、渋み、酸味が主体と言えるでしょう。
ちなみに赤ワインの醸造過程で、果汁にほんのりと色が付いたタイミングで果皮を取り除くと、キレイなピンク色が特徴のロゼワインとなります。
味わいは白ワインに近いのですが、赤ワインの特徴でもある果皮からでるタンニン、いわゆる渋みをうっすらと感じるものもあります。 |
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◇ボルドーとブルゴーニュ さて、赤ワインを代表するといえば、まずはフランスの二大産地、ボルドーとブルゴーニュです。
フランスの地図を見ると、右サイドにブルゴーニュ、左サイドにボルドーが位置します。
それぞれに異なる特徴を持つワイン産地ですが、大きな違いは原料となるブドウにあります。
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ボルドーでは力ベルネ・ソーヴィニヨンというブドウを使います。
力リフォルニアやチリ、オーストラリアなどでも使われています。
ただし、ボルドーではその力ベルネ・ソーヴィニヨンだけを使うわけではないのです。
力ベルネ・ソーヴィニヨン、力ベルネ・フラン、メルローといったブドウをブレンドして、造り手ごとに特徴のあるワインを造っています。 |
どのブドウをどういう割合で使うのかは造り手によります。
よくシャトー○○という名を目にしますね。
ボルドーの場合、ブドウ畑を持ち、自社で醸造しているワイナリーがシャトーと呼ばれますが、それぞれのシャトーで異なるブレンドが、ワインの味わいの妙となるわけです。
力ベルネ・ソーヴィニヨンで造られたワインは色が濃くて暗い感じがします。
渋みの強い力ベルネ・ソーヴィニヨンに、カベルネ・フランやメルローという、比較的早熟タイプで、柔らかさを出すようなブドウをプラスすることによって、ワインになめらかさが生まれます。カシスの香りも特徴といえます。
もちろん、造り手によってブレンドの割合が異なれば、同じボルドーといっても、まったく違うタイプのワインとなるわけです。
よいボルドーワインは長熟といわれます。タンニンが長い熟成を支え、その渋みがなくなる頃、思いも寄らぬふくよかな味わいに出会えます。
一方、ブルゴーニュでは、ピノ・ノワールというブドウ品種を使います。ピノ・ノワールも、力リフォルニアやチリのワインでも見かけますね。
ブルゴーニュの赤ワインは、基本的にピノ・ノワール一種類で作ります。ただ、同じブルゴーニュ地方にあっても、コラム初回に登場したボージョレは、ガメイという品種を使っています。
ピノ・ノワールはブルゴーニュ地方の最高品種と言われます。ブルゴーニュで育ててワインにしてこそ、その本領を発揮するとも言われます。 |
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力リフォルニアのピノ・ノワールもチリのピノ・ノワールもおいしいのですが、やはりピノ・ノワールの味わいはブルゴーニュにあり、なのです。
ピノ・ノワールはわりと透明度の高い赤ワインとなります。きれいなルビー色です。
ブルゴーニュワインは鮮やかな色をしていて、香りもグラスからどんどん出てきます。
ワインの種類にもよりますが、端的にいわれる特徴がスミレやフランボワーズのような香りです。
味わいの中にもあまり渋みがありません。どちらかというと酸味を主体にしたタイプなので、赤ワインを初めて飲むという人にはブルゴーニュの方が飲みやすいようです。
力ベルネ・ソーヴィニヨンはタンニンが豊富ですから、渋みに勝るところがあります。
ところがピノ・ノワールにはこういう渋みはあまりなく、酸味が主体なので、今まで赤ワインをあまり飲まなかった人にも合いやすいのではないでしょうか。
さて、こうしてみると、ボルドーは力ベルネ・ソーヴィニヨンを主体に力ベルネ・フランや、メルローという品種のブレンドでワインができ、そのブレンドの妙が魅力なのであり、ブルゴーニュはピノ・ノワールだけしか使わない、いわば生一本のような、その純粋性が魅力と言えるでしょう。 |
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◇ヴィンテージのこと
最近はジーンズや時計、クルマなどでもヴィンテージ物と言ったりしていますが、ワインに関して言えば、ブドウの収穫年のことを言います。
ブドウは生鮮果実ですから、その年々での出来具合が大事な要素となります。
たとえば去年のボージョレは、ガメイ種が近年最高の出来だったので、とても美味しいワインになるわけです。
ただ、良い作り手のワインなのにヴィンテージが良くないとしても、がっかりすることはありません。
そういうワインは、長い熟成には不向きですが、比較的早めに楽しめますから。そんなワインを探すのも、また楽しみを広げるコツなのです。 |
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◇ラベルを知ればワインがわかる?
フランスもイタリアもドイツも、ワインのラベルに表記されていること、表記するべきことが、いわゆるワイン法で決まっています。
ですからラベルを読めば、どういうタイプのワインかがわかるわけですね。
たとえば、リースリングやシャルドネといったブドウ品種名が書かれていたりします。
ところが、ボルドーやブルゴーニュでは、ほとんどはブドウ品種名は書かれません。
ボルドーではピノ・ノワールを使うことはありません。 力ベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどのブレンドであり、このことがワイン法で定められていますので、ボルドーの赤ワインと言ったときには、これはもしかしてピノ・ノワールかな?というような疑問は生まれないのです。 |
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同じく、ブルゴーニュでは、力ベルネ・ソーヴィニヨンを使うことはない、つまり、ピノ・ノワールを使いなさいということが決められているから、ラベルを見ることで、ワインの素性がわかるのです。
フランスのみならずヨーロッパのワイン法は、はっきりしています。
ワインの名前を聞けば、どういうブドウを使っているか、イタリアのキャンティといえば、サンジョヴェーゼなのだとわかるのです。
イタリアでもバローロというワインでは、ネッビオーロというふうに結びついていくわけです。
それをひとつひとつ積み重ねていくと、ラベルを見ただけでピンとくる、名前を聞いただけでピンとくるということになります。 |
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◇肉料理しかあわないか?
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肉料理に赤ワインという組み合わせは、基本ではありますが、絶対ではありません。
料理とワインの相性は、その味わいのタイプを合わせることでより広がります。
肉料理でいえば、渋みの強いワインは脂肪の多い肉とよく合うといえます。
ワインの渋みには、脂肪を包み込む働きがありますので、口ース肉のグリルなどには、カベルネ・ソーヴィニヨンのような渋みのあるワインが似合い、また、煮込みなど脂身の少ない料理では、ピノ・ノワールのような渋みの穏やかなワインが、料理との相性を一段と良くしてくれるでしょう。
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また、よく言われますが、料理とワインの色合いを合わせてみると良いでしょう。
ポークやチキンのように、やや白っぽい色の素材には、軽くて色の強くない赤ワイン、ビーフのように赤の強い素材には、やや濃いめの赤ワイン、といったように。
これに味わいのタイプ、フルーティさやコクのあるタイプなどを応用すれば、魚料理や和食でも、素材や調理法、スパイスなどを考えてのワイン選びができるようになります。 |
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◇赤ワインの密かな愉しみ
若い赤ワインは、硬い味わいで渋みが強いことがあります。
そんなとき、デカンタという器を使ってワインを移しかえてみます。ワインは空気に触れるとまろやかになります。
ですから若いワインでイガイガするようなものを、わざと大胆に移しかえてしまうと、少し柔らかくなってきます。ものすごく硬い場合は2度くらいやっても良いでしょう。
こんなことも、赤ワインの楽しみ方を広げるコツだったりします。
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赤ワインは室温で、と言いますが、タイプによっても異なります。
ヴィンテージワインであれば、18℃くらいが一番ですが、これからの季節、少し汗ばむくらいのときは、軽いタイプの赤ワインを、少し冷やして楽しんでみてはいかがでしょう。
冷やすときは、できればタップリと氷を入れたワインクーラーを使いたいものです。15分も冷やせば、充分でしょう。
こういうときは、風が心地よいアウトドアでもいいですね。 |
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◇保存には少し気を使いましょう
ワインは、光(日光・蛍光灯)、高温、振動、乾燥、強い匂いが苦手です。
適温(13℃〜15℃)で、コルクが乾燥しないように寝かせて保存したいものです。
気軽に飲むタイプであれば冷蔵庫に入れてもかまいませんが、良いワインの長期保存には適しません。振動と乾燥、かなり低温であること、そして、いろいろな食品の匂いに影響されてしまいます。
新聞紙2枚分くらいで包んで、陽のあたらない、静かなところで保存しましょう。
ワインの木箱をもらってきても良いですね。 |
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◇お酒を楽しむということ
本来、ブルゴーニュのピノ・ノワールは非常に弱いと言われます。
弱いというのはワインになってから弱いということで、旅をさせるな、と言われます。
ですから、輸送して日本で飲むのは、本来の姿が現れていないという人もいます。
本当においしいピノ・ノワールを飲みたかったら現地に行く、ブルゴーニュに行くのが一番です。日本酒でも、その地へ行って土地の料理と地酒と一緒に楽しむのが一番おいしいものです。
機会があれば、ぜひその国の、その土地に行って楽しんでください。 |
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◇ブドウの妙味・主な赤ワイン用品種
Cabernet Sauvignon
(力ベルネ・ソーヴィニヨン) |
ボルドーの代表的品種。カリフォルニアやチリなどでも。しっかりしたタイプのワイン。 |
Cabernet Franc
(力ベルネ・フラン) |
主にボルドーで使われる。熟成が早い。 |
Merlot
(メルロ) |
主にボルドーで使われる。力強さとしなやかさが特徴。 |
Pinot Noir
(ビノ・ノワール) |
ブルゴーニュの代表品種。各地でも栽培されている。スミレの香りが特徴といわれる。 |
Gamay
(ガメイ) |
ボージョレで使われる品種。イチゴやスミレの香り。熟成タイプのワインもあり。 |
Grenache
(グルナーシュ) |
主にフランス、コート・デュ・ローヌで使われる。アルコールが高めのワインが特徴。 |
Syrah
(シラー) |
主にフランス、コート・デュ・ローヌで使われる。スミレの香り。 |
Nebbiolo
(ネッビオー口) |
イタリアのバローロなどに使われる。タンニンがしっかりして長熟タイプ。 |
Sangiovese
(サンジョヴェーゼ) |
イタリアのキャンティなどに使われる。ルビー色。 |
Zinfandel
(ジンファンデル) |
カリフォルニア特有の品種。 |
次回は「芳醇なるモルトウイスキー」です。心地よい夜をじわりと味わいましょう。 |
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